最近、東京都が助成金制度を始めたり、福利厚生として取り入れる企業が増えてきたりと、注目されている卵子凍結。
今回は実際に卵子凍結を行った方に取材をし、実際にやってみて感じた心情の変化などをお話いただきました。
ーー卵子凍結をするにあたって、どのようなお気持ちでしたか?
私が卵子凍結に興味を持ったとき、たまたま同じタイミングで友人が卵子凍結のスタートアップ事業を始めたばかりだったんです。凍結・輸送・保管を担う事業でした。
まだ当時は卵子凍結が今より知られていなかったし、友人の事業もスタートアップだったこともあり、様々なトラブルが発生していたのを間近でみていました。
その時にすごく不安になっちゃって。こんな感じならちょっとやめておこうかな。と、その時は諦めたんです。
でも興味はあったので、当時探せる情報が少ないながらも色々調べていくうちに、信頼できそうなクリニックを見つけて、そこでやろうと決めました。
そんな経緯があったので、クリニックを選ぶ上でまず「保管や管理体制」、「輸送する際の安全性」などを特に注目していました。自分の卵子を預けるのですから、やっぱり安心できるところでやりたい、という気持ちが大きかったです。
ーー実際に卵子凍結を経験されて、一番大変だったことはなんですか?
1番大変だったのは感情のコントロールですね。
私はPMSも少しイライラするくらいでそこまでひどくなく、普段自分の感情はちゃんとコントロールできている自覚はありました。
それが卵子凍結の期間中には、今まで経験したことがないくらい、感情の波が不安定になってしまったんです。
仕事も忙しい中で、理由もなく落ち込んだり会議前なのに涙が止まらなくなってしまったり。誰でもない自分に振り回されている感覚で、精神的にとても辛かったです。
ーー卵子凍結をする前と後で、何か変化はありましたか?
私の仕事はかなり激務で、正直健康とは言えない生活をしていたんです。毎日のように会食があり、睡眠時間もほどんどないような生活でした。
卵子凍結をすることになり、自身の生活習慣を改めました。少しでも良い卵子がとれるように、断酒、カフェインフリー、ハーブ、漢方、アミノ酸、酵素風呂などなど、できることは何でもしました。
その結果、通院期間が7ヶ月半くらいで採卵4回、合計16個の卵子を凍結できました。
すべてが終わってまた日常に戻ったとき、生活習慣も前のように戻ってしまい、そのうちに体調を崩し、入院する事態にまでなりました。
その時に、気付いていなかったけど、卵子凍結の期間は健康的な生活をしていたんだなって思いましたね。それと同時に、ちゃんと養生しないといけないと感じて、今もまた健康的な生活を送るように日々気を付けています。
変化といえばもう一つ、子どもを持ちたいと思う気持ちが強まったということもあります。
そもそも最初は「とりあえずやっておこう」という感じで、どちらかといえば軽い気持ちだったんです。
それが実際に卵子凍結をしたら、「子どもや家庭を持つ人生もいいな」と思い始めました。今まで仕事中心で生きてきましたから、私にもそんな気持ちがあったんだ、とびっくりしました。
それと同時に、仕事へのモチベーションが上がり、以前よりもチャレンジ精神が増しました。
私にとっては驚きと共に嬉しい心情の変化で、これからの人生がさらに楽しみになりました。「私には色んな選択肢があるんだ!」という前向きな気持ちで過ごしています。
ーー卵子凍結という選択肢がもっと世の中に広まっていくにはどうしたらいいと思いますか?
私が卵子凍結をしたとき、ポジティブな反応をしてくれる人が多くいた一方で、あまりいい顔をしない人もいました。「私はよくないと思う」、「自然じゃない」などと言われました。
それを聞いて私の気持ちが揺らぐようなことはなかったのですが、その時に思ったことが、そういう意見が一部の人にあったとしても、「卵子凍結」が1つの選択肢としてあってもいいものだし、自分自身が選ぶことだということです。
色んな意見があってもいいと思っていますが、それをタブー視するのではなく、個人の選択を尊重できる世の中にならないと、体験者がオープンに声をあげる世の中にはならないと思うし、より一般的になることは難しいんじゃないかなと感じます。
そして、働く人の割合で言うと男性の方が多いので、卵子凍結を考える人の上司や同僚が男性であることも多いと思います。なので、女性だけでなく男性にもしっかりと理解してもらうということが大切だと感じますね。
実際に卵子凍結をした方の貴重な声を取材させていただきました。
仕事中心だったこれまでの人生と、可能性が広まった今後への期待について伺うことができ、卵子凍結のこれからの可能性を感じることができました。
そして、卵子凍結を検討する人は働く女性が多いというのが現状としてある中で、職場や社会の理解がもっと広まり、多くの人が自信を持って選択できる世の中に変わっていく必要があると感じました。