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精子凍結とは?方法・費用・妊娠への影響を徹底解説

精子凍結とは?方法・費用・妊娠への影響を徹底解説

精子凍結(sperm cryopreservation)とは、精子を液体窒素(−196℃)で凍結し、将来の妊娠のために保存する方法です。凍結保存された精子の妊孕性は十分に保たれているという報告(*1)も出されており、現在では医療的理由からライフプラン上の選択まで、幅広い場面で用いられています。

精子凍結が必要とされるケース

精子凍結は、特定の状況で有効な選択肢となります。

  • がん治療開始前:化学療法や放射線療法は精子形成にダメージを与えるとされており、米国臨床腫瘍学会 (ASCO) は「生殖年齢にある男性に悪性腫瘍の治療を行う際には、治療前に精子凍結保存を行うことを強く推奨」しています(*1)。
  • 加齢によるリスク回避:男性も年齢が上がるにつれて精子の質が低下することが報告(*2)されており、若い時期に凍結しておくことで妊孕性を保てます。
  • 長期出張や手術:採精が難しい状況に備えた凍結保存です。
  • 不妊治療の一環:顕微授精(ICSI)に使用したり、複数回採精の負担を減らすために利用されます。

精子凍結の方法と流れ

  1. 精液検査:精子数・運動率・形態などを確認
  2. 前処理:必要に応じて、精液から良好な運動精子の分離や濃縮、また不純物を取り除く処理などを行う
  3. 凍結保存:専用の保護液とともに凍結し、液体窒素タンクで保存
    • 緩慢凍結法:段階的に温度を下げる方法
    • ガラス化法:急速冷却により氷晶形成を防ぐ方法

採精は自己採取が基本ですが、必要に応じて精巣や副精巣から採取する場合もあります。

精子凍結の費用相場

  • 初期費用:3〜10万円程度(採精・凍結処理料を含む)
  • 年間保存料:1〜3万円程度。クリニックによって費用は異なるため、複数施設の料金体系を比較するのがおすすめです。

精子凍結のメリット・デメリット

メリット

  • 将来の妊娠の可能性を守れる
  • がん治療や手術による不妊リスクを回避できる
  • 採精タイミングを柔軟に調整できる

デメリット

  • 費用がかかる
  • 妊娠の保証ではない
  • 凍結融解の過程で精子の質が一部低下する可能性がある

精子凍結に関する研究

  • 生まれてくる子どもへの影響:凍結精子を用いて生まれた子どもの一般的な特徴(体重、未熟児、死産、性比)は、一般集団と比較して変化がなかったという報告(*3)があります。
  • 最長保存期間:1972年、当時28歳の男性ががん治療に先立って精子を凍結保存し、その後21年後・28年後に人工授精によって妊娠・出産が成立したという報告(*4)があります。

まとめ

精子凍結は、医学的理由だけでなくライフプランに合わせた選択肢としても注目されています。長期保存の安全性はあらゆる研究で裏付けられており、将来の妊娠の可能性を残すための信頼できる手段といえます。検討の際は、専門医と十分に相談し、メリットとデメリットを理解した上で行うようにしましょう。

参考文献

*1…「当院における凍結精子を用いた生殖補助医療の取り組み」林 忠佑, 松本 香織, 加藤恵利奈, 市川 剛, 千島 史尚, 髙橋 英幹, 新屋 芳里, 春日 晃子, 山本 樹生 日大医誌 73 (3): 150–153 (2014)

*2…一般社団法人 日本生殖医学会 一般のみなさまへ:生殖医療Q&A > Q25 男性の加齢は不妊症・流産にどんな影響を与えるのですか?

*3…Follow-up studies of children born after frozen sperm donation, J Lansac, D Royere, 2021

*4…Successful sperm storage for 28 years, Joseph Feldschuh, M.D., James Brassel, M.D., Nancy Durso, M.D., and Allen Levine, M.D. Vol. 84, No. 4, October 2005

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