「AMHが低いと言われた」「もう妊娠できないのかな?」ーこうした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は、卵巣に残っている卵胞数を推定する指標であり、特に不妊治療や卵子凍結を検討する際に使われます。しかし「AMHが低い=妊娠できない」というわけではありません。この記事では、低AMHと診断されたときに知っておきたい基礎知識と選択肢について解説します。
AMHは、卵巣内の発育段階にある小さな卵胞(前胞状卵胞~小さな後胞状卵胞)から分泌されるホルモンで、 卵巣に「残っている卵胞の数(卵巣予備能」を間接的に示す指標とされています。
このAMH検査は、採卵数の予測にはある程度役立つとされており、体外受精や採卵を行う際の見通しを立てる補助的な情報になります。
ただし、ASRMは、AMHなどの卵巣予備能マーカーの結果は「不妊症の女性の自然妊娠を予測する上で、年齢のみに基づく場合よりも有用性が高くない」ことを明示しています(*1)。
日本の生殖・内分泌分野の委員会報告では、 AMH低値は不妊治療成績不良のリスク因子とされ、約1.0 ng/mL前後が一つの目安とされることが報告されています(*2)。
実際のところ、AMHの平均値は示されているものの正常値を設定することはできないとされています(*3)。
しかし、生殖・内分泌委員会報告では、AMH 1.1 ng/mL 未満の群は採卵あたりの累積妊娠率が同世代平均より低い可能性を示唆する報告がなされています(*2)。
重要なのは、AMH単独で判断せず、年齢や超音波検査、ホルモン検査など、併用データと照らし合わせて評価することです。
AMHが低い場合でも自然妊娠の可能性がゼロになるわけではありません。AMHの値だけで判断せず、複数の検査データを参考にし、治療計画を立てることが大切です。
卵子凍結は将来的な妊娠の“保険”の可能性になりえるため、医師と相談の上、選択肢の一つとして考えてみるのも良いでしょう。ただし、AMHが低い場合は採れる卵子数が少ない可能性が高いため、その点は考慮する必要があります。
AMHが低い場合でも、妊娠・出生が不可能になるわけではありません。ASRMは、AMHなどのマーカーだけでIVF等の治療を「不適格」と判断すべきではないとしており、女性の年齢や精子の質、胚の発育など、妊娠を果たすために重要な要素は他にもたくさんあるとしています(*1)。
また、日本IVF学会の報告(*4)でも、AMH 低値症例においても適切に採卵・胚移植を行うことで妊娠を期待できるとされています。
低AMHと診断されると不安になるかもしれませんが、AMHはあくまで卵巣の卵子の残り具合を示す指標であり、妊娠の可能性を直接決めるものではありません。年齢やその他の検査結果もあわせて総合的に判断することが大切です。
低AMHは焦る必要がある数字ではなく、今後の行動を考えるサインとして受け止め、専門医と一緒に最適な方法を探していきましょう。
参考文献