「アンタゴニスト法」とは、不妊治療や卵子凍結など、採卵を行う治療の中で排卵をコントロールするために使われる方法のひとつで、現在、不妊治療や卵子凍結の現場で多くのクリニックが採用しています。本記事では、アンタゴニスト法の仕組みや治療の流れ、メリット・デメリットについて解説します。
アンタゴニスト法とは
アンタゴニスト法とは、「GnRHアンタゴニスト」という薬を使い、排卵を一時的に抑える方法です。体外受精や顕微授精、また卵子凍結を行う場合、排卵前に十分な数の卵子を採取する必要があります。しかし、自然のままでは卵胞が育つと排卵が起きてしまい、採卵のタイミングを逃してしまうことがあります。アンタゴニスト法を用いることで、排卵のタイミングをコントロールし、医師の指示のもと計画的に採卵できるようになります。
アンタゴニスト法の流れ
アンタゴニスト法は、通常の卵巣刺激スケジュールに組み込まれます。
- 卵巣刺激開始:HMG注射などで卵胞を育てる
- GnRHアンタゴニスト投与:卵胞がある程度育った段階で開始し、排卵を抑制
- 排卵誘発(HCGまたは点鼻薬):採卵の約36時間前に行う
- 採卵:十分に成熟した卵子を採取
※施設によって使用する薬やスケジュールは異なる場合があります。
アンタゴニスト法のメリット
- 治療期間が比較的短い
- 副作用(OHSS:卵巣過剰刺激症候群)のリスクを下げられる
- 治療スケジュールを柔軟に調整しやすい
- アゴニスト法に比べて体への負担が軽いとされる
アンタゴニスト法のデメリット・注意点
- 高価である
- 長期に使用すると子宮内膜の着床環境に対して悪影響を与える可能性が指摘されている
- 排卵抑制の効果が短いため、管理を誤ると排卵が起きてしまう可能性がある
- 妊娠率は患者さんの状態や施設によって異なるため一概には比較できない
他の方法との違い
排卵抑制法には「アゴニスト法」もあります。
- アゴニスト法:開始は早いが、副作用が出やすく治療期間も長くなる
- アンタゴニスト法:期間が短く、副作用が少ないが、タイミング管理が重要
どちらが適しているかは、年齢や卵巣の状態、治療方針によって異なります。
まとめ
アンタゴニスト法は、採卵を行う治療の中で排卵を抑制する方法のひとつです。
副作用のリスクが比較的少なく、治療期間も短いというメリットがありますが、適切な管理が必要になります。「どの方法が自分に合うか」は医師の判断で決まります。治療を始める際には、医師としっかり相談し、メリットとデメリットをしっかり理解した上で進めるようにしましょう。
参考文献
・令和4年度 厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業)標準的な生殖医療の知識啓発と情報提供のためのシステム構築に関する研究「患者さんのための生殖医療ガイドライン」
・公益社団法人 日本産婦人科医会 > 産婦人科ゼミナール > 栗林先生・杉山先生の開業医のための不妊ワンポイントレッスン > 12.排卵誘発方法 自然、セロフェン、レトロゾール法、cc+FSH、レトロゾール+FSH、アンタゴニスト法、ショート法、ロング法