卵子凍結では、全ての卵子が凍結に適しているわけではなく、いくつかの条件を満たす卵子のみが凍結されます。ここでは、凍結できる卵子とできない卵子について説明します。
一般的に、凍結に適しているのは「成熟卵(MII卵)」と呼ばれる卵子です。成熟卵は受精の準備が整っており、顕微授精をすることで受精する可能性が高いとされています。採卵時には、採取できた卵子の中から成熟状態にあるものが選ばれて凍結されます。
卵子の形態や質が凍結の際には重要なポイントです。形が異常な卵子や、細胞内の構造に問題がある卵子は凍結に適さないとされています。卵子の質は年齢や体調などにより変わるとされているため、若く健康な卵子の方がより凍結しやすい傾向があります。
凍結方法として現在主流となっている「ガラス化保存法」は、卵子を超低温で急速に凍結します。(*)この方法で凍結することにより、卵子の細胞が損傷するリスクを抑えることができます。成熟卵は、この方法で成功率が高く保存されます。
採卵時に未熟な卵子が得られることがあります。未熟卵は、まだ細胞分裂の過程にあり、受精に適さない状態です。これらの卵子は凍結しても将来的に妊娠につながる可能性が低いため、通常は凍結されません。
未熟卵はそのままでは凍結できませんが、体外成熟培養と呼ばれる、体外で培養する技術を用いることで、凍結させることが可能な場合があります。
変性卵は、採卵後に形態や構造に異常が認められ、健康な状態を保てない卵子のことを指します。この状態の卵子は、正常に受精したり、胚として成長したりすることがほぼ不可能とされているため、凍結保存の対象にはなりません。
変性卵は加齢や卵巣機能の低下が原因で発生するとも言われており、採卵時の年齢が上がるほど、変性卵の割合が多くなる可能性があります。
このように、卵子の状態には違いがあり、凍結できる卵子とできない卵子が区別されています。
より多くの卵子を凍結させるためには「卵子の質」が重要なポイントとなるため、採卵時の年齢が大切だということが分かります。
参考文献
*…ヒト卵子の凍結保存 ーヒト卵子バンクの実際一(P89-93)、桑山 正成、加藤レディスクリニック 先端生殖医学研究所、第7回 麻布大学 生殖・発生工学セミナー